私たちの体は、直接火に触れたり、熱湯がかかったりした場合、一瞬で「熱い!」と反応し、すぐ熱源から
離れるため、皮膚の深部までやけどが及ぶことはそれほど多くありません。
ところが、体温より少し高い、触れていて「暖かくて気持ちがいい」くらいの温度でも、その熱源に長時間触れ続けることでやけどを負うことがあります。このような「体温よりも少し高いくらい~60℃以下の熱源」に
長時間触れ続けることによって起こるやけどを「低温やけど」といいます。その原因は蛋白質の熱への弱さなのです。人の体は何度まで耐えることができるのでしょうか?これが現れているのが体温計。体温計は体表面ではなく、体内の温度を知るための医療器具です。水銀体温計は目盛りが42℃までしかありません。
実は特殊な病気を除いて、人は42℃までしか体温を上昇させることができないのです。これ以上の体温になると、体を構成している蛋白質が変性し、火傷を起こしてしまうのです。
低温だと深部が焼けてしまうのはなぜか?例えば焼肉。強火で焼くと、中があまり焼けずに表面がこげます。通常の火傷はこのパターン。高温でできた火傷は見た目がひどくても、皮膚から遠い深部にいくほど、軽くなっていきます。ところがカイロや床暖房、さらには膝に乗せたノートPCなどによる低温火傷の場合、表面よりも深部が重い火傷を負ってしまうのです。低温火傷の場合、真皮に加わった熱の多くは血流へ、残りは真皮の下の皮下脂肪の方に伝わります。真皮の深い部分や皮下脂肪は真皮の表面ほど血流が多くないので熱による傷害が大きくなってしまいます。火傷は見た目が軽く見えても、皮膚の土台の真皮の深部や皮下脂肪に傷害が残るので治りが遅い火傷になりがちです。
皮下組織が壊れてしまった場合は、感染症にかかりやすく、入院を必要とすることもあります。 |